映画鑑賞「騙し絵の牙」

『騙し絵の牙』(2021)


老舗の大手出版社(薫風社)の社長が急逝
折からの出版業界不振の波に晒されていた社内は一気に現状打破の改革に本腰を入れようとする専務・東松と、社長の倅を推して現状維持を護ろうと図る伝統尊重派が対立
売り上げの低迷を突かれた伝統尊重派の弱腰を一気に払い
東松はお荷物化している雑誌・企画を次々に中止や廃刊へと追い立てます

お荷物扱いされている文芸雑誌(薫風)の若手・高野は、社の看板作家でもある二階堂大作のパーティで、同様にお荷物扱いの週刊誌(トリニティ)の編集長に焚きつけられて自論を発し
お荷物内のお荷物のような視線に晒される身になっていましたが
斬新な視点や物怖じしない度胸を見込んだとその編集長、速水から直に移動を促されます

そんな速水ですが、実は彼
ある引き抜きで薫風社に勤め始めた新参者
しかも業界では(壊し屋)の異名を持つ曲者で
東松の脅しにも動じる事なく、結果を出し始めます
そんな彼を使えると考えた東松は彼を可愛がり始め
薫風社内は徐々に専務の進める改革に染まってゆくのですが……
面白かったです
権力闘争モノの醍醐味が次々と描かれながら
小説家の噂や夢によくある(ゴーストライター、蒸発)といったエピソードを混ぜて
出版業界の見せたくない部分もチラチラ出してイヤらしく誘ってきました

惜しまれるのは速水を演じる大泉洋が、器用さはあるのに色気が全く伴っていない事
彼の口車に乗せられる人たちの甘さばかりが目立ちます
ま、それ故に松岡茉優が演じる高野の行動が際立ちはしますがね

都心から離れた町で小さな書店を営む高野の父親を演じた塚本晋也が好演
佐野史郎、木村佳乃といった手堅いメンバーに加え
さすがの佐藤浩市に引っ張ってもらう作品です





PHOTOKYO

もっぱら東京で撮った写真の数々

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