映画感想「仁義なき戦い/完結篇」

『仁義なき戦い/完結篇』(1974)


戦後、綿々と続いた広島抗争は警察による(頂上作戦)と一般民衆の運動の前に漸く鎮静化の兆しを見せていたが
網走に送られた広能昌三の居ぬまに、山守組の最高幹部・武田明は広島やくざの団結を呼びかけ
ヤクザという生き方の隠れ蓑として政治結社(天政会)を立ち上げたが
身内の中にはそれを快く思わない者も現れ始め……

高度経済成長から一億総中流の時代へ
新しい社会の中でもがく
ヤクザという生き方しか出来ない男たちの悪足掻きを描くシリーズ最終作
前作でシナリオから降りた笠原和夫からバトンタッチした高田宏治は、笠原から取材メモと構成プランを受け取り
壮大なドタバタ人間ドラマを収束へと導きます

本編を見た笠原和夫が自著(映画はやくざなり)
でも述べているように、笑いの少ない硬質な場面の続く
生真面目な実録映画にまとまっています
武田を演じた小林旭が明朗な日活スターだったとは思えない日陰者ぶりを魅せて
出所した広能と対峙する静かな遣り取りは
菅原文太の抑制も上手く絡み合い素晴らしい緊張感でした
(前作〜頂上作戦も同様です)

全5作
ピンからキリまでのヤクザが死んでゆきましたが
原子爆弾を落とされた広島に生きる若者達が、生を無駄遣いする哀しみに広能が漸く気付くラスト

老いを感じて身を引く気になっている武田とは少し違う
義兄弟だの舎弟だのと、見えない家族を抱えた男の哀愁が漂う

いい表情をしていたなと感じました


PHOTOKYO

もっぱら東京で撮った写真の数々

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